私が薬膳と中医学を本格的に学び始めたきっかけは、難病を患った⺟の⾷養⽣でした。
⺟の体のために何かできることはないかと学び始めましたが、勉強を重ねるほど、中医学が持つ考
え⽅の深さに引かれていきました。
中医学では、病気だけを⾒るのではなく、その⼈の体質、年齢、⽣活、季節、⾷事、睡眠、感情ま
で含めて、体全体の状態を考えます。
初めは難しく感じた陰陽五⾏や五臓六腑の理論も、実際の体の変化と結びつけて考えるようになる
と、決して昔の観念だけではないことがわかってきました。
私はこれまで、ご家族の体調に悩む⼈、⾃分の不調をうまく説明できない⼈、病院では異常がない
と⾔われてもつらさを抱えている⼈、そして純粋に薬膳を学びたい⼈たちと出会ってきました。
教える⽴場になってからも、私⾃⾝、まだ学び続けています。
以前は、正しい薬膳の知識をできるだけ多くの⼈に広めたいと思っていました。その思いは今も変
わりません。
しかし、今はそれだけではありません。
知識を覚えることよりも、⾃分の体の変化に気づけるようになること。
「体に良いもの」を探し続けるよりも、⾃分に合うものを考えられるようになること。
誰かが決めた健康法に⾃分を合わせるのではなく、⾃分の体と相談しながら選べるようになるこ
と。
それが、薬膳を学ぶ⼤きな意味ではないかと思うようになりました。
すぐに答えが出なくても、体は⽇々、さまざまなことを知らせてくれています。
⾷欲、便通、眠り、冷え、汗、肌、⾆の状態、気持ちの揺れ。そうした⼀つひとつを丁寧に⾒てい
くと、⾃分の体が何を求めているのかが、少しずつわかるようになります。
薬膳を通して、⾃然を感じ、⾷べることを楽しみ、⾃分の体を⼤切にする⼈が増えてほしい。
そして、体調が良いときも、つらいときも、⾃分の体を責めるのではなく、今の状態を理解しよう
と思える⼈が増えてほしい。
そのために私は、中医学と中医営養薬膳学の理論を、できるだけ正確に、そして⽇々の暮らしに結
びつく⾔葉で伝えていきたいと思っています